武蔵小山の横丁 2012 / GARAGE SPEC MUSASHIKOYAMA

界隈を読み込む,取り込む,組み込む.
photo : sobajima toshihiro
品川区の東急目黒線武蔵小山駅近く,下町風情漂う,活気のあるアーケード商店街を抜けた辺りに建つ18戸の集合住宅である.敷地は東面で6Mのみ接道し,西面の緑道に向かって奥行33M超の東西に細長い.南北面は,町工場や集合住宅,戸建住宅が迫っており,敷地そのものが,前面道路より丁の字のごとく奥へと続く,この界隈に点在する「横丁」のような空間だ.


の敷地の特性を取り込むべく,1階を土間空間としたメゾネット,トリプレットタイプの住戸を断面的に絡み合うように積み重ね、敷地内に設定した通路,新たな「横丁」に面して並べた.


街につながる「横丁」の水平的な拡がりを土間で取り込み,住戸内で階段を巡って生活する垂直的な拡がりへと展開している.隣接する工場,マンション,住宅の開口部に配置しながら,周辺の建物群のスキマを見出し,敷地の外へ,さらに街へと抜ける視線を獲得すべく開口部を穿つ.

さらに横丁に面する隣地工場の外壁を補修,塗装することで工場壁を借景に見立てている.
細長い広場のように設えた外部空間を生活空間へと取り込み,気持ちの良いスケール感を生み出すことを試みた.1階の扉を開くことで繋がる横丁空間を互いに共有すると共に,同じ壁を見て暮らす「連帯感」のようなものを生み出したかった.

ステンシルサインで室名を明示されたスチール扉,黒皮剥き出しのスチール階段,長い横丁を照らす防犯灯,グラフィック処理された外部露出配管等…町工場が点在する武蔵小山界隈のアイコンであり,肯定的に建物が街に溶け込むカモフラージュとなる.

街に感じる「親しみ」や魅力を読み込み,整理して,建築的に取り込み表現することで,建物が界隈に同化し,また街の魅力を増幅させることを意図した。